“ヌナブト”というところ
先日、赤坂のカナダ大使館に写真展を見に行った。
たまたまかけていたFMに、この写真展の企画者の一人であるアン・マクドナルドさんが出てきて、「イヌイットの人たちのことをもっと知ってほしい」というようにおっしゃっていたので興味を持ち、出かけてみたのだ。
そして、いささか自分の無知を恥じることになった。
故・星野道夫氏の影響もあって、この国ではイヌイットといえばアラスカだけの先住民であるかのように思っている人間がほとんどではないかと思う。いうまでもなく、私自身がそうだった。
しかしこれはまったく浅薄な思い込みというもので、イヌイットはカナダの極北地方にもたくさん住んでおり、そこが“ヌナブト”なのだ。
ヌナブトは正式には「ヌナブト準州」というのだそうだが、会場に張られた地図で見るかぎり、どうやらヌナブトは、あのアラスカよりもさらに広いらしいことにまず驚かされた。
そして、この写真展自体が雄弁に語っているように、この広大な地は決して無人の地ではなく、カナダ全体のイヌイット人口約4万5千人の内、約2万2千人がこのヌナブトに住んでいるのだという。
残念なことに、あまり時間がなくてゆっくり見ることができなかったのだけれど、展示された写真を見てまず思ったのは、この遠い極北の地に、私たち日本人とそっくりな容貌をもつ人たちが、そこを自分たちの故郷として生きているということの不思議さだった。
写真がとらえているヌナブトの人たちの表情に将来に向けての希望の光のようなものが感じられるのは、1999年に行政上の一定の自主権をようやく手にしたということも関係しているだろう。
しかし、TVでご覧になった方もいるだろうが、星野道夫氏ゆかりのアラスカの小村シシュマレフが地球温暖化の影響で廃村の危機に直面しているように、ここヌナブトにも同様の危機が着実に迫りつつあることは疑いようがない。
この写真展は9月20日まで開かれている。
この夏の間に、ぜひ一度足を運んでみるようおすすめしておきたい。
詳しくは以下を――。
写真展「イヌイットの今 〜変わりゆくカナダの極北」
http://www.canadanet.or.jp/p_c/inuit2007.shtml
追記)
シシュマレフの危機のことはNHKの「気候大異変」という特集番組でも取り上げていたが、2003年6月に放映されたTV朝日の番組が詳しく伝えていた。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/060219.html
http://www.tv-asahi.co.jp/earth/midokoro/2003/20030601/index.html
この問題の全容を知るには、まずここから。
http://www.asahi.com/special/NorthPole/TKY200608070390.html
いろいろな人たちがブログでこの問題にふれており、以下は大いに参考になるはず。
http://www.fish.hokudai.ac.jp/news/topics/20060926index.htm
http://columnbank.way-nifty.com/think/2005/11/post_d457.html
http://masaruyamanaka.cocolog-nifty.com/kenkyu_diary/2006/06/nhk4_d6f4.html
北極海の氷が遠からず消失しそうだというニュースはこちら。
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200708160375.html
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/science/20070817/20070817_001.shtml
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