ある類似

民主党野田佳彦代表*1は、ある歴史上の人物に、実によく似ているように思われる。

筆者は歴史学者ではないし、その人物に会ったことがあるわけでもないので、安易に断定することはできないが、その人物の事跡や当時の人々の証言の類に目を通してみると、両者の類似は否定しがたいと思うのだ。*2

その人物とは、江戸時代の終わりを招き寄せた「大老井伊直弼のことだ。
井伊直弼といえば、日本の「開国」に功があった人物と思っている方が多いと思われるけれども、当時、有力大名の多くも開国は避けられないと考えていたので、それを直弼一人の功績であるかのようにみなすのは、かなり問題がありそうだ。
要するに、開国を決めたかどうかではなく、問題はその「やり方」なのだが、知れば知るほど、直弼の対処の仕方は賢明だったとはいえず、もっとやりようがあったのではないか、と思えてくる。*3
直弼が、ほどなく“安政の大獄”にまで突き進んで多くの有為な人材を死なせ、その結果、桜田門外の路上に死骸をさらすことになったことは、改めて述べるまでもないだろう。

そんな直弼の最期が無惨なものであることは言うまでもないが、では野田氏はどうなるのだろう…と思っていたところ、すでに総選挙の結果も出た。「第三極つぶし」とも思える急な解散劇の結果誕生するのは「漁夫の利政権」であることになって、残したツケは大きいが、野田氏の悪あがきをこれ以上見なくて済むことになりそうなのは、当面、筆者個人の精神衛生にはよいことかも知れない。*4

*1:この稿は16日に一度アップしたのだけれど、不手際によって消してしまったものを再度書いてみたものだ。野田氏はすでに代表辞任を表明しているが、当初のままにしておく。

*2:当時の情勢等については、筆者はほぼ全面的に海音寺潮五郎氏の『西郷隆盛http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4022503440.htmlに依拠している。大冊だが、政治を志すほどの人なら、これはぜひ読んでみていただきたいものだ。

*3:筆者は近江の国=滋賀県の人々には何の恨みもなく、むしろシンパシーを持っているが、当時の彦根藩でも井伊直弼大老としての仕事には疑問を持つ人間が少なくなかったらしいということを付記しておきたい。

*4:筆者は、野田氏は「総理になるべき人物ではなかった」と思っているわけだが、民主党内にもそう見ている人間がいるのは当然だろう。この記事を一読されたい。http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20121225-OYT1T00196.htm?from=y10