置き土産

世間では安倍政権がどうなるのかへの関心しきりのようで、それも無理のないこととは思いつつ、年末でもあるので、この26日に総辞職した野田政権のことなどについて少し振り返っておこうと思う。
そもそもは、3年余に及んだ民主党政権をトータルに検証すべきだとは思うのだが、今は十分な時間もないので、ここでは短縮バージョンで済ませておきたい。

そこで、まず問題にしたいのは、やはり尖閣諸島の問題だ。
野田氏は、なぜあのタイミングで、あれほど突然に、尖閣諸島を「国有化」するなどという愚挙に踏み切ったのか…ということについては、この時期だからこそ、しっかり検証しておくべきだと思うのだが、結果の重大さばかりに目を奪われたためか、その点を問題にした言説をほとんど目にしないことが筆者には不思議でもあり、大いに不満でもある。

誤解のないように言っておけば、筆者は、尖閣諸島を日本の領土だと主張することは間違いではないし、いずれは国有化すべきだろうとは考えていたのだが、野田内閣が国有化を決定したというニュースはあまりにも唐突で、一瞬、「何だって?」と自分の耳を疑ったほどだ。

そもそも、これほど重大な事案であれば、外務省等から多くの情報を取るのが当然だし、内閣でも大いに意見を戦わせたに違いない…と思いたいところだが、今回の経緯を外側から見るかぎり、その形跡さえ見られない。筆者にはその真相はわからないが、これでは、史上にも稀れな失政をしでかしたのも無理はないと言わざるをえない。

ともかく、野田氏は政権の座を去ったが、彼が残したマイナスの置き土産はあまりにも大きい。筆者も、いたずらに悲観してばかりいるつもりはなく、今後、日中関係が少しでも改善されることを祈っているが、野田氏の誤まった「決断」が引き起こした結果は、到底短期間で水に流せるようなものではないということは肝に銘じておきたい。*1

*1:筆者は、中国側の対応についてはあえてふれなかったが、もちろん、日系企業の店舗等を破壊するなど論外なことだし、政府首脳の対応の肩を持ったりするつもりもまったくない。しかし、中国の政治体制が国際的にも非常に特殊なものであることは外交上のイロハであり、それだけの理解も持たなかったらしい人間が首相の座にあったことの異常さをここでは問題にしている…ことをご理解いただきたい。