へうげもの

人によっては「今さら」の話題になるかも知れないが、「へうげもの」が面白い。

そもそもは講談社コミック誌「モーニング」で2005年から連載が始まっていたようだが*1、筆者は比較的最近、NHKが放映しているアニメ*2を見て知った。

実際にコミックを手に取ってみると、扱っている題材は実に多彩で、この作品の面白さを伝えるのはなかなか骨が折れるのだけれど、しいていえば、“危急の時における笑い”に目を向け、その意味を再認識させるだけの力が、この作品にはある、ということだろうか。

ただし、「笑い」といっても実は様々であって、この作品が描いている「笑い」は西洋流のユーモア等とは明らかに異質なものであるように思われる*3。この作品は戦国時代末期の社会とそこに生きた武士たちの生き様を題材にしているが、「へうげもの」という作品名がおのずと語っているように*4、そこに日本的な笑いの源流の一つを探ることが、この作品全編のモチーフであるといってもよさそうだ。
これは、相当に野心的な試みだといってよいと思うが、作者・山田芳裕氏は実に見事にそれをやってのけているし、NHKのアニメの出来栄えも立派なものだ。*5

大人の鑑賞にも資する上質のエンターテインメントとして、この一文をご覧いただいた方には、ぜひご一見いただきたいと思う*6

*1:http://morningmanga.com/lineup/show?id=13

*2:http://www9.nhk.or.jp/anime/hyouge/

*3:とはいっても、もちろん、笑いとして共通する点も少なくないことはいうまでもない。

*4:「へうげ」は「ひょうげる」という動詞からの派生語で、「へうげもの」は「おどけた男」というほどの意味になる。

*5:アニメの放送はすでに終了しました。

*6:へうげもの」の時代背景を知るには、海音寺潮五郎氏の「戦国風流武士 前田慶次郎http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4167135426.htmlを併せて読まれるとよいだろう。強くお薦めしておきたい。