裁判といふもの

今度の木曜日になるが、3月14日に、東京地方裁判所で、注目したい裁判の28回目の法廷(法曹用語では「口頭弁論」という)が開かれる。*1

乱暴を承知でひと口に言ってしまえば、この裁判は、若者に人気のある街として知られている東京・世田谷の下北沢の街並みを大きく破壊してしまう新しい道路の建設計画の是非を問うものだ。*2

下北沢といえば、「路地の街」として知られていて、「迷路のようだ」などと言われることも多いのだけれど、長年通い慣れた筆者には、それほど無秩序ではなくて、2006年に行政が再開発の呼び水となるような「地区計画」を決定してしまうまでは多くの建物が3、4階程度で揃えられていたこともあって、むしろ、この国には珍しい独特のバランスや統一感があることこそが、下北沢の街並みの大事な魅力の一つなのではないか、と感じていた。

とくに、小田急線の北側の街並みなどは、幅は広くはないけれども、道路もほぼ碁盤の目のように交差していて、とても上質な都市的空間が形成されているといってよいと思うのだけれど、計画されている新しい道路は、約26mという幅でその中心部もつぶしてしまうというあまりにも乱暴なものなので、「この道路計画は間違っているから、事業の取り消しを命じてほしい」というこの裁判の趣旨に賛同して、微力ながら支持させてもらっている。

ところで、裁判というものは大きくは民事と刑事に分けられるのだけれど、この裁判は、地域の住民の方たちが原告で、国(国土交通省)・東京都・世田谷区という“行政の団子三兄弟”が被告になっているので、分類すると「行政訴訟」というものになる。つまり、警察のお世話になるような事案でもなければ、土地や財産をめぐる争いといった民間人同士の損得を扱うわけでもない第三の類型といってよいと思うのだけれど、問題になるような事業は一般に規模がとても大きいことを始めとして、知れば知るほど、この裁判のような「行政訴訟」の結果は、これからの日本の社会がどうなって行くのかを大きく左右するに違いないと実感されてくる。

14日には筆者も傍聴に行く予定だけれども、この国の公共事業のあり方に疑問や関心をお持ちの方はもちろん*3、「裁判ってどんなものなんだろう?」という素朴な興味をお持ちの方々にも、ぜひ傍聴してみていただきたいと思う*4

*1:2013年3月14日(木)午後3時からで、法廷は霞ヶ関の裁判所1階の103号大法廷です。

*2:この裁判についての詳細は、原告の団体である「まもれシモキタ!行政訴訟の会」のHPhttp://www.shimokita-action.net/を見ていただきたい。

*3:とりわけ、都市計画に関心をお持ちの方にとっては、この裁判はとても大きな意味を持つのではないかと思う。このページからhttp://www.shimokita-action.net/archive/x_y1_y2_z_shutyoushomen.htmlこの訴訟のこれまでの文書をダウンロードできるけれども、とくに、平成24年12月に原告側弁護団が提出した「旧都市計画法の変遷とその検討の意義」について論じている準備書面(46)には、ぜひ目を通してみてほしい。

*4:次回の第29回口頭弁論は、6月13日(木)の午後3時30分からに決まりました。法廷は、第28回と同じ東京地裁の103号大法廷です。ぜひ傍聴を!